2014/07/22

幼児英会話は役に立たない


 2014/07/22現在の、素読舎のレッスン実況録音のファイルに付けたコメントです。
 音声ファイルはありませんが、英語の音に関して素読舎がどんな考えにもとづいてレッスンしているかを知って頂けると考え、転写致します。

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音の足腰がしっかりしてきた


 そういえばこの子はずいぶん音がしっかりしてきたなと、レッスン途中で気付いたので録音した。

 以前にこの子の練習を録音した覚えがある。村田君に頼んで「対比」という名前の容れ物をつくってもらい、以前に録音した音声ファイルと今のものを対比して聴けるようにしてもらうつもりである。

 この子は素読舎のレッスンを始める前に、ネイティヴが講師をしている小学生用の英会話教室に通ったとお母さんから聞いている。

 幼児あるいは小学生くらいまでの年齢の子供はネイティヴの音を簡単に真似することができる。これは口の筋肉が日本語によって固まりきっていないから起こることだが、このうまい真似は非常に浅いところの口の筋肉を使っている。口の筋肉が柔らかいのと、非常に浅いところを使うことによって生じる音である。

 簡単にしかも正確に音を真似ることができるが、口はすぐにまた元に戻ってしまう。その子の日常の言語が日本語であるから、英語の音はすぐに抜けてしまう。

 その子の日常の言語が英語であるなら、放っておいても問題はない。10年20年というけっこう長い時間がかかるが、音は少しずつ筋肉の深いところまで根を張るようになる。(だけど、その子の日常の言語が英語であった場合、親が子供を英会話教室なんていうけったいなものに通わせることをするはずもない。英語ネイティヴの音なんか、そこらに石ころのように転がっているからだ。)

 私は昔から同じことを繰り返し言ってきた。
 口の筋肉のごく浅いところで英語の音をつかまえた子供が、普段日本語で生活しているのであれば、英語の音は簡単に抜けてしまう。中学くらいになって、高校入試の準備だとか、なんだかんだやっているうちにすっかり抜けてしまう。学校が放置するカタカナ発音になって、それが定着していったりする。

 そういう子が素読舎のレッスンを始めた場合は、「しっかりと下手になる」とも言ってきた。素読舎のレッスンは、「口を大きめに使って引き締める」とか、「動きを浅くしないでつなげる」というような指示を出すが、これは口の筋肉の比較的深いところを動かそうとするからである。
 幼児英会話で身につけた音など、半年か一年で「しっかりと下手になる」。そして、立体的な口の動きが新たに作られてきて、ようやく本当の英語の練習用の音ができてくる。

 この練習用の音は、そのまま使える英語の音につながっていく。

 録音した生徒も一度はしっかりと下手になった。今の状態は、そのトンネルを抜けた状態である。

 この先、まだいくつかのトンネルはあるが、ひとまず最初のトンネルは抜けたのである。日本人が持つべき「使い物になる英語用の口の動き」の元になるものはできてきている。

 しっかりと下手になった時は、浅い音が壊れかけた状態なので、赤飯を炊いてお祝いすべきだとどこかに書いた覚えがある。

 この生徒は、浅い口の動きが壊れた後、さらに最初のトンネルを抜けた状態なので、二度目の赤飯を炊いてお祝いしていい状態である。

 この音なら使える。
 英米人に聴かせてみれば、答は一発で出る。

 口の筋肉のごく浅いところに宿り、普段日本語で生活しているせいで、英語の音の「ア系列」がめちゃくちゃに入り乱れたり、あるいはもやしみたいに弱い音になったりした子供の英語音と、素読舎の訓練を経て最初のトンネルを抜けた英語音とを両方とも英米人に聴かせれば、素読舎育ちの音が断然いいと彼らは言う。

 「それっぽい音=浅いもやし音」をありがたがっているのは日本人だけだ。

 いずれは、8語から10語程度の文の「入れ替え・変換」をやらせることになるが、それをやってみても、口が浅い筋肉でつかまえただけの音はほとんどまったく使い物にならない。つまり、幼児英会話は役に立たないのである。それが役に立つと幻想してしまうのは、「磁場」ということが理解できないでいるからなのである。日本にまともな語学論がなかったことが祟っている。

 毎日毎日、日本語をしゃべっている日本人の子供の場合、英語音は訓練しなければ身につかない。
 幼児英会話なんかに通っても通わなくても、そのことに何の変わりはない。
           
(転写後保存.txt から)

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